サイトのタイトル「豊穣」、豊穣とは自然から授かった「汗をかいたご褒美」です
☆チー君日記☆

飼い主が不在になってしまった老犬介護の記録(8)

平成二十年三月二十九日~四月四日



【四十三日目】 平成二十年三月二十九日(土曜日)

   午後三時に「チー君」宅に直行しました。昨日は、午後九時と夜中の見回りが出来なかったので、なるべく早めに来ました。玄関のドアより顔を出し何時もどおりの眼で見ています。ささ身と缶詰半分を食べさせてきました。何時も引き綱を見せて散歩に誘うのですが、この頃は全然無反応。午後九時又、缶詰を食べさせようとしましたが、顔を背けてしまいました。仕方がなくささ身スティックを十本食べさせると食べます。高蛋白低カロリーですが、バランスは缶詰の栄養素より良くありません。

  わがままになってしまっているようですが、食べさせなければ体力はなくなりますので、食べないよりはましです。手で口に近づけて食べさせるのですからそれだけでも時間がかかりますが、コミュニケーションと思えばいいのですから。水は飲んでいますのでまだまだ大丈夫です。


【四十四日目】 同三月三十日(日曜日)

   昨日仕事が遅く、今日は帰りが午前五時半になってしまいました。ミネラル製造は五時間を要します。ですから時間的に午前様になってしまいます。仕様がありません。ちょっと眠いのですが我慢しました。今日は、仕出し弁当が昨日と同じような数量が予約されています。帰ったら直ぐに取り掛かる状態です。我ながらですが、良く健康でいられると感じています。「特製のタレ」がなかったらとゾッとします。

  相変わらず「チー君」はささ身が本命で、今日は少しだけ缶詰も食べてくれたので一安心です。何とか散歩に連れ出そうとしているのですが、起き上がろうとはしません。残った缶詰をおいて帰ってきました。仕出し弁当が終わったら母が来てうなぎ屋に直行です。毎週注文は「鯉のあらい」とうな重です。何時もおいしそうに食べてる母を前に、がんばって生きてくれているなあ、と感心しています。うなぎ屋から帰ると眠くてどうしようもなく午後五時過ぎから睡眠をむさぼってしまいました。今日は「チー君」には会いにいけそうにもありません。


【四十五日目】 同三月三十一日目(月曜日)

   午後三時「チー君」宅へ。下半身が動けず、玄関先で大小便をしていました。玄関が臭いのです。いよいよ危険な状態になってきています。でも、餌は食べていますので、何とか持ちこたえてくれれば、と祈るような気持ちです。ささ身と煮干を食べられるだけ食べさせ、缶詰をおいて置きました。手でも缶詰を与えていますが、なかなか食べてはくれません。

  午後九時、見回りです。少し缶詰を食べてくれました。一安心です。それにしても、玄関が臭い。いろいろなものが玄関においていますので、体が大きい「チー君」はのでのびのび寝られません。明日か明後日、玄関と大小便を掃除しようと思っています。ペットシートも必要です。


【四十六日目】 同四月一日(火曜日)

   午前五時半、「チー君」宅に。この頃は、何時も熟睡しているようです。熟睡と言うより、もう感性も弱くなってきているようです。声を掛けると、ピクリとして私を見ます。寝ぼけ眼が愛らしいのです。朝早く起こしてしまいましたが仕事上この様な時間帯になってしまいました。「チ-君」はやはり下半身が動かなくなっています。いよいよ介護の状況です。子牛の骨付き干し肉を買ってきましたが、思いのほか食べてくれました。置いておいた缶詰も食べてくれました。来客があり、日中は「チー君」に会いにいけませんでした。午後十時、ようやく「チ-君」の所に。玄関での大小便が凄い量でアンモニア臭があります。明日、玄関をきれいにします。勿論「チー君」の下半身も綺麗拭き取らなければなりません。何にも食べてくれません。餌入れに煮干、子牛、ささ身を入れて帰りました。


【四十七日目】 同四月二日(水曜日)

   午前三時「チー君」に会いに行きました。従業員を連れてサウナに行ったり夜の食事を食べました。帰ってきて直ぐ「チー君」のところへ。餌入れを見たら煮干、子牛、ささ身は綺麗に食べていました。今日は、午後に玄関の大掃除です。午後二時半、もう一人連れ、二人で玄関の大掃除をしました。いろいろな物をどかして綺麗にしました。松本さんのセーターを持ち上げると、おしっこがたれるほどしみこんでいて、重いくらいでした。大便も小山のように重なっていたり、散在もしています。全て取り除き大掃除です。

  「チー君」の下半身も持参した湯で綺麗にふき取りました。ふき取るときに痛がって泣きましたが、ふき取らなければ皮膚病になったり床ずれを起こします。一時間掛けてほぼ玄関と「チ-君」を綺麗にしました。ペットシートを玄関に引き、おしっこをしても今度はペットシートが吸い取りますから「チー君」には付きにくくなります。午後九時見回りに行きました。缶詰は食べていませんでしたが煮干、子牛、ささ身は食べていました。


【四十八日目】 同四月三日(木曜日)

   来客があり、「チー君」宅に着いたのは午後三時半に。昨日買ってきたペットシート(紙おむつと同等)を敷いていたのですが、ぐちゃぐちゃに丸まっていてぼろぼろになるまで噛んでしまっていました。少しですがおしっこは吸い取っていましたが、大便は玄関のコンクリートにこびりついていました。好きなささ身の軟らかい半燻製を買って与えました。それも国産ですから高価なささみになってしまいました。

  母は、毎日通ってます。今日は、農林試験場に花見見物しました。母と花見見物をするのはもう十六年間続けています。父の遺影を持っての花見見物です。父が逝ってからもう十一年目を迎えますが、父の遺影と一緒の花見見物です。一、四キロの直線の道路に桜が両側の歩道を囲むように四列になって咲き乱れている桜のトンネルなのですから、母が毎年「連れて行ってほしい」と言うのもわかります。今年は、二回目です。もう一回、散り際に見物させようと思っています。

  「チー君」の鼻頭らに近づけると「ぱくり」と食欲旺盛な状態で食べます。唯の好きなものではなく、「大好き」な食品でなければ食べてくれなくなってしまいました。午後九時、何時もどおり「チ-君」の見回りをしました。何とか、シートはしかれた状態を保っていますが、多分次の日にはぐちゃぐちゃです。

  ささ身の半燻製と缶詰を与えて帰りました。今日はやけに眠くて午前の訪問は取りやめにしました。


【四十九日目】 同四月四日(金曜日)

   午前中と夜に、花見の仕出し料理と宴会が予約されていました。会席料理の刺身四十一人前と寿司を百二十三個が私の受け持ち料理です。何故大量の時には私が殆ど刺身料理を作るか、と言うと、原価が一番かかる料理だからなのです。僅か一グラムの違いでも刺身の切り身が三百切、であれば、三百グラム違ってきます。一切れでも足りなければ、魚を初めから造らなければなりません。そうすると、原価は単純なグラムの違いだけではなくなります。

  昨日、ご近所のおばさんが通りがかり、「チー君」の世話をしているのを見て、数分間立ち話をしました。その叔母さんも「チー君」は十五年以上は生きているのではないかとお話してくれました。「この犬は松本のおばあさんが可愛がり、いつも牛乳とチーズを食べさせていた」と言っていました。今日は、牛乳とチーズを持参し、食べさせると食べる食べる、多分松本のおばあさんにもらっていたときを思い出して食べているのかな、と想像しながら牛乳とチ-ズを食べさせました。午後十時過ぎの訪問介護です。一人では十分な掃除や「チ-君」の汚れをふき取れないので、二人での訪問介護になってしまいました。

  玄関の掃除から「チー君」の介護まで二人で一時間以上かかってしまいました。その間に牛乳とチーズも与えました。玄関にシートを下に引き猫砂をその上に載せ、最後にすのこを引けば多少のアンモニア臭は防げるのではと考えています。今日もかわいそうですがチェ-ンを引きながら下半身を板の上に乗せて玄関の外に「チー君」を引き出し、玄関を綺麗になるまで雑巾がけをしました。二人でしか作業できません。余り力ずくで作業をすると「チー君」に負担がかかります。玄関先に出すと相当量のおしっこをしてしまいました。下半身にべったりとおしっこがしみこみ、何回もふき取る作業を繰り返し、綺麗に拭き掃除した玄関にシ-トを引き、「チー君」を玄関に入れ、最後に「特製のタレ入り」牛乳を餌箱に入れると直ぐに飲みだしました。よっぽど乳製品が好きみたい、と判りました。今日は六Pチーズも一箱食べてしまいました。あと、ささ身燻製もですから、「贅沢犬チー君」になってしまいました。

  人間の介護も大変ですが、犬の大きいのはもっと大変です。何せ言葉が通じないのですから。通りがかりのおばさんが、「なんて親切な人がいるのだろう」ともう一人の手伝わせている従業員に言っていたそうです。この従業員は四十年間この住宅街にいた住人ですから一人ひとりの住宅を網羅しています。そんなこんなの一日でした。又明日も同じ作業をするのですから、本当に介護は大変ですが、ちょっと別の親近感も芽生え始めている所です。


(2009/6/03 配信、次回続きは 6/17 配信の予定)