サイトのタイトル「豊穣」、豊穣とは自然から授かった「汗をかいたご褒美」です
☆食材を語る☆

◆◇おせち料理◇◆

□■この項は正月に因んで、2005/1/07、1/14、1/21 の三回にわたって配信したものです。大分割愛して一回分に再編しました(それでも大分長くなってしまいました)。食材というより調理の奥深さを紹介しようとしました。それでは坂本隆司との一問一答で Go!■□


Q 明けましておめでとうございます。ことしのお正月はいかがお過ごしでしたか。

A いやー、年末ぎりぎりまで、おせち料理の仕込みで大変でした。おかげ様で、正月はのんびりすることができました。

Q 今日は調理師としての腕前を拝見する趣向で行きたいと思います。坂本さんのところのおせち料理はどんなメニューですか。

A 三段重で、「一の重」は、イセエビ、栗きんとん、鯛の姿焼き(800グラム)、紅白かまぼこ、金柑柚子入り白ワイン煮、筆生姜、丹波産黒豆、です。これ、「上」の場合です。「二の重」は、伊達巻(海老入り)、ローストポーク、杏赤ワイン煮、銀だら西京漬け、豚角煮、平目のこぶ締め、鮭のこぶ締め、2色卵茶巾絞り、捲き酢の物胡麻酢ダレ付き、です。「三の重」は、ホタテの煮物、甘海老煮物、鮎昆布巻き、花人参含め煮、牛肉八幡巻き、合鴨照り焼き、しいたけ含め煮、蓮根含め煮、ウコッケイ鰻巻きたけのこ含め煮、というメニューでした。

Q 豪勢ですね。最近の食生活では、どれも買って来ることはあっても、自分で作ることのないものが多いですね。

A そうなんですが、たまには自分で作ってみるのも楽しいし、家族にもよろこばれると思います。

Q いくつか選んでひとつ調理のコツを披露してください。できれば普段でも作る機会が多いものを選んでいただけませんか。どれからいきましょうか。

A 鯛の姿焼きからいきましょう。新年だけでなく、めでたい時に是非挑戦してみて下さい。まず背びれに沿って隠し包丁を入れます。長さ10cm程度、裏側に入れて包丁痕が見えないようにします。それから踊り串を打ちます。姿焼き独特の、頭が持ち上がり胸ヒレが下がり腹部が上がり尾びれの付け根が下がり尾びれがピンと上を向く、あの波打ち串刺しです。隠し包丁を入れないと、この格好がつかないんですよ。胸ヒレ、背ヒレ、尾ヒレに塩を隠れるように多く付けますが、「化粧塩」といいます。焼いている途中落ちてしまえば、落ちた部分は焦げてなくなってしまいますし、温度によっては焼けすぎてこげてなくなってしまいますから、火加減が難しいんです。

Q 簡単に真似ができる技ではなさそうですね。で、次は何にしましょうか。

A 栗きんとんはどうですか。

Q そうですね。きんとんは何かの折りに作りますね。

A 栗は渋皮剥ぎが大変ですね。一気に剥かずに固い表皮をはずします。次に下から頭部のとがっている方に渋皮を剥いていくのです。色が、黄色くない栗は使用しないように選別します。次に茹でますが、その時に「くちなし」の実の乾燥しているのを砕いて布袋に入れるのです。これで、黄色の綺麗な色に仕上げります。煮あがってもしばらく漬け置きしておきます。それから、崩れた形の栗を潰し、裏ごしして衣を作ります。当然、衣の量が足りませんので金時サツマイモを同じに煮ます。同じに裏ごしし、衣を煮ます。

Q きんとんの味は自然につくものなんですか。

A 甘味はグラニュー糖を使用します。塩は一切使用しません。最後の仕上げに蜂蜜、水飴を使用し、濃度を付けます。いかに濃度だけ濃くして薄味に仕上げるかが腕の見せ所なのです。

Q 濃度だけ濃くして薄味に仕上げるなんて、これも技ですね。次は、「二の重」からローストポークなんかどうでしょう。普段でも作ったり召し上がったりする機会が多いと思われます。

A 調理は火加減が大切ですが、ローストポークは特にそうです。切った時に中がピンク色でなければ美味しくなくなり、見た目も綺麗に見えませんからね。まず準備段階として付けタレを作ります。ビニール袋に、濃口醤油、薄口醤油、赤ワイン、酒、塩、ホワイトペッパー、ブラックペッパー、蜂蜜、水飴、ハーブ類を使って作ります。豚肉ロースの周りの端切れを切り脂身を整えて4~5時間ビニール袋ごと冷蔵庫で寝かせます。寝かせ終えてから蛸糸で形を整え鉄板上でブラックペッパーを再度振りかけます。焼き方ですが、最初強火、ある程度焼目がついたところで、ホイルを乗せて弱火から火を止めて、余熱を利用しながら焼きます。肉を指で押して中が少し弾力性があるところで外に出しておけば、中がピンクになります。串を肉中央まで刺して熱が通っているかどうかでチェックすることもできますね。

Q 付けタレの作り方なんか色々コツがありそうですが。

A あまり気にしないでお好み次第でいいと思います。ブラックペッパーなんかもね、お好み次第ですが、表面が見えないほど振り掛けてもおいしいです。

Q 次は銀だら西京漬けにしましょうか。特別めでたいことがなくても、結構召し上がる機会が多いと思いますので。

A 銀だら西京漬けは、石野味噌(京都の白味噌)を使います。角バットに石野味噌を引き、さらしを引き、銀だら切り身を並べます。並べた銀だらの上にさらしを乗せて石野味噌を乗せます。一昼夜冷蔵庫で寝かせ、水分が上がったら漬け込み完了です。これは中火程度で焼きます。焦げやすいですから、目で確かめながら焼くことです。銀だらは割れやすいのでオーブンで焼く事をお勧めします。

Q 石野味噌でなくてはいけないんですか?

A レシピではただ白味噌としか書いていないものが多いですね。また、京都の白味噌といっても、醸造元によって色々な銘柄があります。こうなってくると、後は好みとしかいいようがありません。ただ、私は石野味噌にこだわっています。本格的な調理では、白味噌ひとつ取っても、厳選したものしか使いませんから。

Q 「三の重」からは何をえらびましょうか。

A それでは鮎昆布巻きで行きましょう。まず、鮎を焼く前の準備があります。鮎のヌルを落とすこと、くさ身を消すこと、腸に残っている食べかすを押し出すこと、です。

Q 具体的にはどうするんですか。

A 塩でモミ洗いをするんです。難しいのは、腸に残っている食べかすを押し出すところです。

Q 腹を押したら簡単に出てくるんではないですか。

A いやいやどうして。お腹に卵が入っている鮎を使用するので、強く押しすぎると食べかすと一緒に卵も出てしまうんですよ。卵は固まっていますから卵の部分は押さないで、腸の部分を押し出すのです。手の感触で柔らかな部分だけを押し出すということです。

Q 手の感触ねー。

A 調理にはねー、理屈ではなく手の感覚で覚えるというところが結構あるんです。憶えるまでに失敗を繰り返します、いわゆる「見習い期間」というやつです。

Q その感覚というのは、一定の見習い期間が経つと誰でも覚えることができるんですか。

A 10年で日本料理の基本を正式に覚えられる見習は優秀と言っていいでしょうね。基本をしっかり覚える事が出来る見習は、10人中1~2人程度です。結局調理師は一割位が本物ということではないでしょうか。

Q それはまた大変ですね。この世界も才能がないと駄目なんでね。

A 余程しっかりした精神力がなければ、基本を覚えきれずに半端職人になってしまいます。手先が器用とかの問題ではなく、精神的にしっかりた人間か、夢を持っている人間だと思います、10年掛かって基本を憶える事が出来るのは。

Q 調理の親方とか鉄人になるのは、更にその先の先ということになりますね。

A 更に修行をして20年、30年と重ねる必要があります。本物の親方は最初の見習からでは1000人に一人位ではないでしょうか。更に修行する店や、しっかりした親方にめぐり会えなければ難しいでしょうね。

Q 話を戻して、鮎昆布巻きを続けましょう。塩モミ洗いの後は?

A 1時間程度水でさらし、よく拭いてから焼きます。軽く塩を振り付け中火で焼きます。程よく火がとおったら暫くしてさめてから、日陰干しをします。

Q 次はいよいよ煮昆布で巻く段ですね。これも、簡単なようで難しいんでしょうね。

A 煮昆布は汚れていますので、最初水で絞ったさらしで、次に乾いたさらしでよく拭きます。さらしは、火であぶり毛を焼き落としておくことが大切です。

Q 後は、鮎を巻いてかんぴょうで締めるんでしょう。

A 5重に巻くんですけど、隙間があったら巻き直しですね。最後は煮方になります。大鍋に並べ隙間が出来ないようにします。

Q 出汁とか煮汁というか、どうするんですか。

A 出汁は昆布、鰹節、煮る時にほんだしを使用します。昆布、鰹節、が入りましたので、しいたけの汁を入れると、三大旨み成分が出揃います。更に強火で沸騰したら、中火30分程度、弱火10時間、落とし蓋をして煮るのです。酒、ここでは新潟産「赤酒」を使用します。みりんは、固まりますから使用しません。最後に、蜂蜜、水飴で更に濃度調整をします。

Q 弱火で10時間ね、それと調味の複雑さ、いやはや大変なものですね。誰にでも分かるコツを伺うつもりでしたが、どれを取っても一筋縄では行かないようです。ところで、「アロエミネラル」は使うんですか?

A 勿論です。昆布は直ぐに腐敗、カビが生えまから、それを止め、日持ちを良くし、まろやかさを出すことが出来るのです。私の場合どの調理でも、アロエミネラルをほんの少し1万分の1程度入れた水を使用します。これで臭みが消えますし、腐敗も防げますよ。ですから技術マニュアル通りに調理すればさしたる失敗がございません。調理にも是非アロエミネラルを使用してみてください。

Q たった1万分の1でも、違いが出て来るものなんですね。ながくなりましたが、おせち料理はこれでおしまいにします。

(2005/1/07、1/14、1/21 配信をもとに再編集)