サイトのタイトル「豊穣」、豊穣とは自然から授かった「汗をかいたご褒美」です
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科学技術について


  環境汚染と自然の復元力で、「自然の復元力を利用して環境汚染を食い止めようとする時、既存の知識や理論を使いこなすだけでは不十分で、経験と叡智が求められます。」という趣旨を述べました。また、経験と叡智が生きる職人芸では、「曖昧模糊としたところに、ものの本質が潜んでいることが非常に多いと感じています。」とも述べました。

  しかし世の中一般の通念として「科学的かどうか」という判断基準があるように思います。科学的であるというお墨付きがないと眉唾ものと受取られることが往々にしてあります。科学的とは、一言で言えば因果関係が客観的に確かめられ従って先行きが予測できる、ということになるでしょうか。一方、「経験と叡智」といっても、因果関係が客観的に確かめられているとは限らず、科学的以前のものという印象を与えがちです。だからといって切り捨ててしまえるものでしょうか。

  最近「技術は地球を救えるか」という本を読みました(著者:長崎浩、作品社)。著者は地球循環系の中で生態系の占める重要性を説いています。そして科学技術と生態系の関係に言及しています。そのいくつかを拾ってみたいと思います。

  • 生物とりわけ生態系はこれまで工学にとって「じゃまもの」であり、ときにこれを抹殺することにより科学技術は自然を制御してきたのである。工学と生態系は別の知識分野でありこれまで疎遠であり続けてきた、という以上に両者はいわば「センス」が違う。
  • いまだに生態学は、理論家の予測よりも経験豊かな実践家に頼るほうがましな科学分野である。要素的な因果関係から結果を予測するという科学理論の条件を欠くことは、生物学がいまだに遅れていることを示すのではなく、省みられるべきはかかる科学理論の公準のほうではないのか。
  • エコロジーとテクノロジーのかかる相性の悪さのために、テクノロジーは生物を相手とするときいくつか特徴的な反応を示すようである。反応のひとつは生態系の単純化である。(例として)微生物資材はいまや農業では流行の先端である。だが、名のある微生物を(一要素として取り出してきて)培養して土壌改良剤とし、これを畑に振りかけたとして、もともと存在する土壌微生物の大群落の中でどんな働きができるか分かりはしない。
  • もうひとつの反応は、技術の成績を犠牲にして技術の画一化をはかる形で現れる。経験技術では「技能」の余地を消去できない。そして技能は「属人的」なものである以上、個々の技術者やユーザーの特性から技術の成績を切り離すことができない。一方テクノロジーは、誰がやっても同一の成績を上げねばならない。(工業製品では当然求められることであるが、農業という産業に同じことを求めた結果)機械化と化学肥料・農薬による現代農業が技術の画一化を成し遂げた。このような技術思想が篤農とそこに蓄積された技能をごく短期間に一掃した。・・・・・農家のレベルを低位に平準化したのである。

  著書全体の結論やそれに対する感想などは差し控えたいと思います。ただ上にあげた引用は著書のバックボーンになっていると思われます。また、わが意を得たりの感を禁じ得ません。


  また最近読んだ本に「奇跡のリンゴ」があります(著者:石川拓治、幻冬舎)。リンゴの無農薬栽培に挑戦した苦闘の記録ですが、苦節6年ようやく土壌の生態系に気づくところが圧巻でした。「森の木々は農薬など必要としていないのだ。・・・(麓の畑のリンゴとくらべて)決定的に違うことがひとつあった。雑草が生え放題で、地面は足が沈むくらいふかふかだった。土がまったく別物だったのだ。」と書いています。こうして無農薬栽培の端緒を掴むのですが、もう少し引用してみたい箇所があります。

  • 蜂の大発生は三年間続いた。同時にリンゴ畑から害虫が姿を消した、ということになれば話としてはわかりやすのだが、自然は一筋縄では行かない。・・・・・自然の生態系が保たれていると場所では、肉食動物が草食動物を食い尽くしてしまうことはないのだろう。・・・・・そういう綱引きは、たとえば土中のような畑の目立たない場所でも起きていたに違いない。綱引きが繰り返されるごとに、畑の生物相は豊かになった。・・・・・多種多様な生物が棲むようになって、畑の生態系はより弾力のある安定を獲得する。
  • 自然は細切れになどできない。・・・・・自然の中に、孤立して生きている命など存在しない。自然をどれだけ精緻に分析しても、人はリンゴひとつ創造することは出来ないのだ。バラバラに切り離すのではなく、ひとつのつながりとして理解すること。科学者がひとつひとつの部品にまで分解してしまった自然でなく、無数の命がつながり合い絡み合って存在している、生きた自然の全体と向き合うのが百姓の仕事なのだ。だから、百の仕事に通じなければならない。」

  この本を読んでしばらくしてある日のこと、病院で診察を受けたことがありました。若い女医さんでした。ふと見ると先生の机の上にこの本が置いてあります。「あれっ、先生もこの本を読んでおられるのですか?」と思わず声をあげてしまいました。医療の現場でこの本を目にしたのは新鮮な驚きでした。



  さて、このサイトのテーマは「いのち」「自然」です。サイトオーナーが三十数年かけて磨いてきた「いのちを育む水」や経験と叡智の蓄積は、まさしく俗人的な技能と言えるものでしょう。その根底には、「生態系の活性化を促す」という視点があります。たった二冊の本ですが、科学的公準ではかりきれない生態系の奥深さを、あらためて認識する思いでした。


注:このページはサイトマスターが記述・寄稿したものです。サイトオーナーの了解を得て「自然の復元力」に追加します。


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2/13/2009